こんにちは、クロサワ楽器町田店の小島です。
本記事では、Martinギターの中でも小ぶりなサイズのギターである、Backpackerシリーズ、Little Martinシリーズ、Juniorシリーズの3つのシリーズを紹介させていただきます。
トラベル用としても、気軽にご自宅で弾く用としても人気を集めている、これらのシリーズの魅力を掘り下げてゆきます。
Backpacker Seriesの紹介
初めてこのギターを目にされた方は、恐らくこう思う方が大半ではないでしょうか。
【これはギターなの?】
大丈夫、ご安心下さいませ。
まごう事なくアコースティックギターです。
Backpackerとは
Backpackerという楽器は1992年に誕生しています。
Backpackerを直訳すると、【バックパックを背負って旅する人】
それが転じて、少ない荷物&予算で旅をする方を指す言葉となっています。
名の通り旅の相棒をイメージして製作された事が伺えます。
モデル | トップ材 | サイド&バック材 | スケール | ナット幅 | P.U | 税込価格 |
Backpacker | スプルース 単板 | トーンウッド 単板 | 609.6mm | 42.9mm | – | ¥48,000 |
また、マーチン社がこのモデルを開発した理由は、もう一点ございます。
それは、端材の有効活用です。
アコースティックギターは様々な木材を用いて製作されますが、その過程でどうしても端材は発生してしまいます。
とは言えマーチン社が使用している木材なのでその品質は1級品、ただ捨ててしまうのはあまりにも勿体ない。
それらの材を無駄なく使用する為に、この独特な形状が誕生しました。
魚のアラもキチンと調理すれば美味しい料理に仕上がるのと一緒ですね。
Backpackerの魅力
では具体的に、Backpackerの魅力を掘り下げてゆきます。
まずはやはり、その取り回しの良さでしょう。
一目で分かる通り非常にスリムな形状で、かつ軽量の為に気軽に持ち運びが行えます。
山や海へは勿論、なんと宇宙へも行ったことがある程です。
ちなみに、宇宙で演奏されたギターはこのBackpackerが初めて。
また、付属している専用ケースもサイズを合わせているので、ケースに入れてもコンパクトさは薄れません。
次に音色、楽器なので当然ですね。
お店でご試奏いただいた方の多くから、「想像より音が出る」というご感想をいただけます。
スリムなボディから驚くほどしっかりと音が響くのです。
音が大きいというよりかはキチンと箱鳴りをしている感覚です。
その理由は楽器の構造にございます。
端材とは言え良質な材を使用している事は前述しましたが、それに加えてBackpackerはボディが所謂オール単板構造となっています。
単板であるが故によく振動し、スリムなボディでも響いてくれるという訳です。
マーチン特有の美しい共鳴の中に、どこかしゃがれたようなニュアンスもある、本モデルならではの音色を確立しています。
担当スタッフ個人の感想では、アコースティックギターというよりBackpackerという独立した1つの楽器という印象を持っています。
最後に、本モデルはケースの他にストラップも付属しています。
その独特な形状の為に足の上に楽器を乗せて弾くという事が出来ないので、座って弾く際にもストラップを使用して演奏します。
細かい事ですが、こういった気配りと楽器の特性を良く理解している点は、さすがにマーチンですね。
Little Martin Seriesの紹介
次に紹介させていただくのはLittle Martinシリーズです。
グラミー賞アーティスト、エド・シーランが使用している事でも大変有名ですね。
Little Martinとは
一般的にミニギターと称されるのはこのサイズでしょう。
勿論ただ小さいだけではなく、通常のギターにも勝るとも劣らないのがマーチンクオリティです。
2023年6月現在では、モデルが4種類ございます。
モデル | トップ材 | サイド&バック材 | スケール | ナット幅 | P.U | 税込価格 |
LXK2 | HPL (コア柄) | HPL (コア柄) | 584.2mm | 42.9mm | – | ¥64,000 |
LX-1 | スプルース単板 | HPL (マホガニー柄) | 584.2mm | 42.9mm | – | ¥64,000 |
LX-1E | スプルース単板 | HPL (マホガニー柄) | 584.2mm | 42.9mm | 〇 | ¥80,000 |
LX-1RE | スプルース単板 | HPL (ローズウッド柄) | 584.2mm | 42.9mm | 〇 | ¥80,000 |
モデル名にあるLXにおいて、LはLittleの意ですが、Xにも本シリーズ独特の特徴が含まれています。
Little Martinシリーズとは別にXシリーズという物も存在しておりますが、モデル名にXが記載されている物はHPLという材がボディに使用されています。
HPL(ハイプレッシャーラミネート)は木材の繊維や樹脂を高圧で圧縮した物で、Backpackerの開発意図とも通じますが、森林保護を目的として開発された素材です。
特徴は木材に比べ温度や湿度の影響を受けにくく丈夫な事、また加工材である事を逆手にとり美しい木目のプリントする事で華やかな外観に仕上がっている事です。
LXK2はボディ全面にHPL材を使用し、LX1はトップにはスプルース単板を使用しています。
全面がHPL材だとしっとりとした落着きのある響きで、トップがスプルース単板の物はクリアで明るい音色が特徴です。
Little Martinの魅力
ミニギターの魅力はやはりそのコンパクトなサイズ感でしょう。
特に演奏性の面ではスケール(弦長)の違いによる影響が大きく、マーチンのフルサイズ代表モデルD-28のスケールと比較すると、約60mm程短くなっています。
スケールが短くなると弦の張力がフルサイズの物より優しくなる為に、弦を押さえやすくなります。
またフレット間も必然的に短くなる為、お子様や手が小さめの方でも指が届きやすいのではないでしょうか。
ちなみにD-28とLXの1フレット間の幅を測って見たところ、約3mm程短かったです。
数値だけだと僅かな違いに思えますが体感上では大きく異なり、人の感覚の敏感さを改めて感じます。
こちらがLXの1フレット間
こちらがD-28の1フレット間
サイズ感だけが魅力であればほとんどのミニギターに当てはまりますが、Little Martinならではの魅力は音色にもあります。
一般的にボディサイズが小さくなると音量も小さくなり、また低音分も弱まっていきます。
音量が小さい事はご自宅で練習しやすい等のメリットにも繋がりますが、低音が少なくなると音が細くなった印象を受け、また高音部が目立つ事でシャリシャリとした響きになってしまう事もあります。
Little Martinの優れているところは非常に音域のバランスが良い所でしょう。
音域バランスが良くリバーブ感も含まれている為、柔らかで広がりのある音色をご堪能いただけます。
音域バランスの良さとリバーブ感はマーチンギター全体の特徴とも言えるのですが、ミニギターにおいても体現しているのは凄いですね。
Junior Seriesの紹介
最後に紹介させていただくモデルが、Juniorシリーズです。
リトルからジュニアへ、すくすくと成長しました。
Juniorシリーズとは
通常のフルサイズとリトルマーチンのちょうど中間に位置するサイズで、正にミディアムサイズと言った立ち位置です。
2023年6月現在ではモデルが6種類ございます。※ベースモデルを除く
モデル | トップ材 | サイド&バック材 | スケール | ナット幅 | P.U | 税込価格 |
DJR-10-02 | スプルース 単板 | サペリ単板 | 609.6mm | 44.5mm | – | ¥84,000 |
DJR-10E-02 | スプルース 単板 | サペリ単板 | 609.6mm | 44.5mm | 〇 | ¥97,000 |
DJR-10E STREETMASTER | サペリ単板 | サペリ単板 | 609.6mm | 44.5mm | 〇 | ¥110,000 |
000JR-10 | スプルース 単板 | サペリ単板 | 609.6mm | 44.5mm | – | ¥90,000 |
000CJR-10E | スプルース 単板 | サペリ単板 | 609.6mm | 44.5mm | 〇 | ¥105,000 |
000CJR-10E STREETMASTER | サペリ単板 | サペリ単板 | 609.6mm | 44.5mm | 〇 | ¥122,000 |
モデル名にも記載されている通り、マーチンを代表するボディシェイプであるD(ドレッドノート)シェイプと、000(トリプルオー)シェイプをわずかに縮小した形状。
全体的にコンパクトではありますが、ボディの厚みはフルサイズの000シェイプと同じにする事で取り回しの良さと深い箱鳴りを実現しています。
またスプルース×サペリと言うオーソドックスな材の組み合わせの他に、ストリートマスターと呼ばれるモデルもございます。
こちらはボディ全面にサペリ材を使用し、よりウォームな音色となっています。
ストリートマスターは路上や旅先で長年ギターを弾き込んだ様な味わいのある質感を表現する為に、独特なフィニッシュに仕上がっています。
持ち運びがしやすい本モデルにピッタリですね。
Juniorシリーズの魅力
Juniorシリーズの魅力はなんと言っても、そのトータルバランスの良さでしょう。
ミニギターの演奏性の良さは記述させていただきましたが、ミニギター程のサイズになると音色はやはり特有の物になります。
もちろん優劣はございませんが、本モデルはフルサイズとほぼ同等の響き方をしています。
コンパクト故の弾きやすさに加え、鳴りはフルサイズのギターに近いという絶妙なバランスが、本シリーズ特徴です。
また、Juniorシリーズは全てのモデルがオール単板ボディです。
この仕様により、音色はクリアで広がりがあります。
更にレスポンスも良い為に軽く弾いてもしっかりと音が出るため、力まずリラックスして演奏をお楽しみいただけます。
オール単板のモデルはどうしても金額が上がってしまいますが、本モデルは10万円程に抑えられております。
サウンド、演奏性、コスパと3拍子揃っており、メインギターとしてもサブギターとしても活躍する事が出来ます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
一口にコンパクトギターと言ってもその特徴や魅力は様々です。
皆様も是非お試しいただいて、お気に入りの音色や用途に合ったモデルをお選び下さい。