Martinの傑作「Authentic」シリーズとは

こんにちは。福岡ミーナ天神店の岡崎です。
今回はMartin Authentic & Vintageのシリーズを解説していきます。

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Authenticシリーズ登場までの軌跡

Martinの黄金期と呼ばれる1920年代~1940年代に製造されたギターはヴィンテージは全てのアコースティックギターの頂点であり、世界中のギタリストやコレクターから羨望のまなざしを受けています。

この年代のヴィンテージ・マーティンの再現を試みたシリーズが今回ご紹介する「Martin Authentic」シリーズです。

1970年代になるとすでに戦前に製造されたヴィンテージマーティンの評価は不動のものとなっており、多くのルシアや競合メーカーがヴィンテージ・マーティンのコピーを製造しビジネス的な成功を収めていきます。
そんな中、本家マーティン社も1976年に1930年代のD-28を復刻したモデル「HD-28」を発表します。

「HD-28」はヘリンボーン・トリム、スキャロップド・ブレーシング、ジグザグ・バックパーフリングの仕様を備え登場。
当時のスタンダードモデルにはなかったルックスとサウンドはヴィンテージテイストにあふれており、ヴィンテージを好むユーザーにも高い評価を受けることになります。
まさに後の復刻シリーズの走りと言えるでしょう。

*画像は現行のHD-28

1984年には毎月期間限定でスペシャルなモデルを発表していく企画、「ギターオブマンス」がスタートします。
実験的なモデル、ヴィンテージ復刻モデル、ヴィンテージ仕様を多く含んだアーティストモデルが開発されていく中で1994年のジーン・オートリーD-45や1995年の000-42ECで成功をおさめ、ヴィンテージ復刻の熱はより高まっていきます。
そして、1995年にヴィンテージ・シリーズ、ゴールデンエラ・シリーズがスタートしていきます。

ヴィンテージ・シリーズとはプリウォーマーティンの仕様を取り入れた復刻シリーズで、ゴールデン・エラシリーズ(黄金期)とは、ヴィンテージ・シリーズよりもさらにこだわり深くアディロンダック・スプルース、ブラジリアン・ローズウッドといった戦前に用いられていた材を使い、Vネック、30年代風のブレーシングやロゴなどの仕様も再現したコレクターも納得のシリーズでした。

(この2つのシリーズの中間であるMarquisシリーズはラジリアン・ローズではなくインディアンローズを用いて販売価格を抑えたシリーズ)

*画像はD-28Marquis

これらのシリーズがヴィンテージの復刻版だとするとオーセンティック(Authentic)はタイムスリップ版、完全クローン版と言えます。

2006年にはついにD-18Authentic 1937が登場。カスタムショップで製造されるAuthenticシリーズは、にかわ接着、T-barロッドの仕様を備えた1937年製の完全コピーモデルとして一躍脚光を浴びました。

2007年にはD-28 Authentic 1937も登場。当時、日本にわずかしか入荷していないD-28 Authentic 1937を見に展示している系列店全店をお客様と共に回ったものです。

Authenticと他シリーズとの比較

Authenticシリーズのコンセプトは当時の仕様はもちろんのこと、同じ製造工程を経て完全復刻を目指すシリーズです。
Golden Era / Marquis / Vintage /Standard各シリーズとの主な仕様の違いを比較をしてみましょう。

Top 材

Vintage /Standardの多くはシトカ・スプルース材を使用するのに対し、Authentic / Golden Era / Marquis では戦前にMartin社が用いていたアディロンダック・スプルースを使用。
最新のAuthenticではアディロンダックスプルースの表面版にVTS加工が施されており、経年によって育つ木材の変化を新品の状態から再現しています。

Bracing Pattern

Golden Era / Marquis では戦前仕様に倣い、アディロンダック・スプルース材でスキャロップド・フォワードシフテッド・エックス・ブレーシングを採用していますが、Authenticの場合はより当時に忠実に肯定も再現。同じスキャロップドのフォワードシフテッド・エックス・ブレーシングであるものの、先にブレイシングをトップに張り付けてから削っています。

1枚1枚トップ材の硬さは異なりますので個体により削り具合も変えるこのやり方はカスタムショップの熟練職人にしかできない工程です。
*Martin社に訪問した際に試しにブレーシングを削らせてもらいましたが、難しくて全くできませんでした。職人の腕、おそるべし!

Neck Shape

Authenticだけの特徴として挙げられるのがネックの削り出し工程で、なんと全て手作業で削り出されています。
1本1本手作業で行うことにより、機械では決して出来ないネックを握った時のフィット感、絶妙に手になじむ感覚を味わうことできます。
狙っている再現年式により太さが変わり、1937年頃までは太めのVシェイプ、1939年以降になるとナローのVに変化していきます。

Finish

塗装もAuthenticのStyle18、28では当時の工程と同じやり方を採用しています。

他のモデルでは艶のあるラッカー塗装がなされていますが、Authenticは艶が抑え目なフィニッシュが施されています。
Martin社の倉庫で発見された当時のレシピ通りに行うこの塗装方法を「Vintage Gloss」 と呼んでおります。

接着方法

Authenticが登場した2006年に最も話題となったのがその接着方法でしょう。
タイトボンドでの接着が一般的な方法ですが、Authenticのみニカワ接着を採用しています。タイトボンドに比べて固まるのが早いニカワ接着ですが、ボディ全体の共鳴が豊かになりサウンド面での貢献度が高い方法となります。

T-Barロッド

Golden Era / Marquis / Vintage /Standard全モデル共通でマーティンギターにはネック調整が行えるようにアジャスタブルトラスロッドが搭載されています。

しかし、Authenticにおいては当時の完全再現を謳うだけあり、横から見るとTの字になったバーでネックの補強がなされています。
これにより簡単にはネック調整が出来ないわけですが、「利便性」よりも「当時と同じ仕様にすることでの音の再現」を選択した結果といえます。

その効果は間違いなくサウンドに現れており、ネック内部の密度の高いT-Barロッドにする事での鳴り方の違いは目を見張るものがあります。

Custom Shop製

工場内にレギュラー品とは完全独立した部門としてカスタムショップがあり、Authenticはこちらの部門で製造されています。
上記では1つずつ仕様の違いに触れてきましたが、実は最も完成度に影響を与える違いではないでしょうか。

通常ラインで一定数量産する部署と、1本1本にこだわりぬいて製造するカスタムショップ、その違いを体感できるのがAuthenticの良さでもありますね。

Authenticシリーズラインナップ

Custom Major Kealakai


Top Material:Adirondack Spruce with VTS
Back Material:Sinker Mahogany
Side Material:Sinker Mahogany

Fingerboard Width at Nut:47.6mm

D-18 Authentic 1937

Top Material:Adirondack Spruce with VTS
Back Material:Genuine Mahogany
Side Material:Genuine Mahogany

Fingerboard Width at Nut:44.5mm

D-18 Authentic 1937 Aged

Top Material:Adirondack Spruce with VTS
Back Material:Genuine Mahogany
Side Material:Genuine Mahogany

Fingerboard Width at Nut:44.5mm

D-28 Authentic 1937 Guatemalan(2022)


Top Material:Adirondack Spruce with VTS
Back Material:Guatemalan Rosewood
Side Material:Guatemalan Rosewood

Fingerboard Width at Nut:44.5mm

D-28 Authentic 1937 Guatemalan Aged(2023)

D-28_Authentic_1937_Guatemalan_Aged(2023)

Top Material:Adirondack Spruce with VTS
Back Material:Guatemalan Rosewood
Side Material:Guatemalan Rosewood

Fingerboard Width at Nut:44.5mm

まとめ

いかがでしたでしょうか。

黄金期と呼ばれる時代の工法に着目し、あえて原点回帰し徹底した作り込みよるヴィンテージの再現を果たしたAuthenticシリーズ。

アコースティックギターの王者、Martinの底力を味わえるシリーズであり、想像を超えるクオリティに驚愕することは間違いありません。

伝統を守りながらプライドを体感できるこのシリーズをぜひお試しください。

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