D-45の魅力: Martinギターの伝統と進化

こんにちは、クロサワ楽器池袋店アコースティック館の曽根です。

言わずと知れた、”キング・オブ・フラットトップ ”こと”D-45”を紹介します。

多くのミュージシャンに愛され、アコースティックギターのトップに君臨する”D-45”
力強さと華やかさを兼ね備えた”D-45”は、いつかは手にしてみたいと思う永遠の憧れであり、絶大な支持を得ているモデルです。

D-45のサウンド特徴と他モデルの特徴と比較

力強さと華やかさが共存した”D-45”
倍音豊かに、透明感溢れるサウンド、一音一音に色気・艶があり、奥行きも備えたまさにマーティンギター最高機種に相応しい極上の音色です。

そして、よく話題になる”倍音“とは…周波数の倍の周波数を持つ音のことと言われております。

もう少し音響学的に説明しますと、440Hz(A)を基音としますと1オクターブ上の音は880Hzの2倍音となり、2オクターブ上の音は1760Hzの4倍音となります。
基音(A)、1オクターブ上の音(2倍音)、2オクターブ上の音(4倍音)を同時に鳴らしたら、基音だけの音を鳴らすより、圧倒的に音に厚みが増します。
もっと分かりやすく歌で説明しますと、一人で歌っているより複数人で同じ音程、オクターブ上の音程で歌った方が、厚みや迫力が増すのは容易にイメージできるかと思います。
少し話が逸れましたが、このような原理が”D-45”にも働いています。

サウンド表現で表すと、実音に自然なリバーブ、コーラスがかかり音に包まれるようなイメージで音に深み、広がりが増した感じになります。
まるで部屋→コンサートホールで聴いている感覚に近いように感じます。

”D-45”はよくグランドピアノサウンドと比喩されることがあります。
※グランドピアノサウンドとは…
なめらかに音が伸び、奏でた音が自然な形で演奏者の耳に届くため、豊かな音色に包まれた状態で演奏することができ心地良い空間が生まれます。
また、和音を弾いても一つ一つの音が濁らずクリアに響き、楽器全体が共鳴体となり、低~高音域まで豊かな響きが特徴とされております。
そして、低音域の力強くも厚みのある音もグランドピアノサウンドの魅力の一つとなっております。

HD-28(スキャロップド・ブレイシング)、D-41、D-42、D-45は何故ブレイシング・パターンが一緒なのに音が違うのかと疑問に思っている方は多いかと思います。
以下の2点がサウンドに大きな違いを生み出します。
※D-28はノンスキャロップド・ブレイシング、D-18はサイド&バックがマホガニー、D-35は3ピースバックのため除く。

  • 木材グレードの違い
  • 倍音構成の違い

木材グレードに関しましては、前述で触れていますので割愛しますが、倍音構成の違いも大きく関わっているように感じます。
※倍音構成とは…ここでは基音を軸として、3度(2音)、5度(3音半)の音を指しております。

ここでは、HD-28、D-41、D-42、D-45の順にサウンドイメージをお伝えします。

HD-28のサウンドイメージ

倍音が少ないため音に包まれるような感じはなく、木材の素直でストレートなサウンドが印象的。

D-41のサウンドイメージ

HD-28の豪華版といわれており、木材はHD-28よりグレードの高いものを使用しております。
HD-28より倍音は多めに出ており、歌で例えるとハモり担当が一人加わったイメージです。

D-42のサウンドイメージ

木材グレードはD-41と大きく差はございませんが、ハモり担当が一人~二人に増えたイメージで、音に厚み、さらに美しさがプラスされた音色です。

D-45のサウンドイメージ

木材グレードは全てにおいてプレミアムグレード(最高ランク)を使用しており、
ハモり担当が三人~五人に増えたイメージ+低~高音域の存在感はズバ抜けており、誰が弾いても聴いても良い音してるなと思える説得力のある唯一無二のモデル。

D-45の歴史と生産された背景

ここでは、”D-45″のターニングポイントを紹介します。

・1933年~1942年の間に生産された”D-45”
D-45は1933年にカントリーミュージシャンのジーン・オートリーの特別注文に始まり、
1942年の戦争物資制限による材料不足で製造中止となった9年間に作られた91本を指しています。  
現存する「オリジナル D-45」は、かなり貴重で市場で見かけることが非常に困難となっています。

・1968年~1969年の間に生産された”D-45”
1968年~1969年の”D-45″にはハカランダ(ブラジリアン・ローズウッド)が使用されており、高額で取引されております。
※1968年は67本、1969年は162本と2年間で229本。
1968年~1969年の間に生産された”D-45”は、マーティンギターの終着点として神格化されています。

・1970年以降に生産された”D-45”
1969年末にハカランダの輸出輸入はワシントン条約にて禁止されたため、
“D-45ハカランダモデル”から、”D-45インディアン・ローズウッドモデル”に仕様変更されてからの”D-45”と言われております。
1970~84年までは、スクエアロッド・ネック(SQネック)、ノンスキャロップド・ブレイシング、
さらに、1974年まではトップ材にジャーマン・スプルースが使用されていたりと、とてもスペシャルな内容となります。

・1986年に、スクエア・ロッドからアジャスタブル・ロッドに変更。

・1988年に、ノンスキャロップド・ブレイシングからスキャロップド・ブレイシングに変更。

・1996年に、ソリッド・アバロンからラミーネート・アバロンに変更。

1996年から現行の”D-45”とイメージする方が多いかと思います。

2017年の仕様変更

スキャロップド・ブレーシングからフォワード・シフテッド・スキャロップド・ブレーシングに変更。
ブレイシングの位置がサウンドホール寄りになったことで、音量が増し、深い低音、低~高音域サウンドレンジが広くなりました。

・トップ塗装がクリア・フィニッシュからエイジング・トナーに変更。
木肌の色が分かりやすいクリア・フィニッシュからオールドライクな色合いが魅力的なエイジング・トナーとなりました。

ロトマティック・ペグからオープン・ペグに変更。
オープン・ペグにしたことで質量が軽くなり、サウンドレスポンスが向上しました。

・ネック・シェイプがロー・プロファイルからモディファイド・ロー・オーヴァルに変更。
ロー・プロファイルに比べモディファイド・ロー・オーヴァルは、やや薄めのモダンなネック・シェイプとなっているため演奏性の幅が広がりました。

・ナット幅が1 11/16”(約42.9mm)から1 3/4”(約44.5mm)に変更。
1 3/4”(約44.5mm)と横幅が広がったことで、指の収まりが良くなりフィンガーピッキングがし易くなりました。

・スタンダード・テーパーからハイ・パフォーマンス・テーパーに変更。
ハイ・パフォーマンス・テーパーに変更したことで、ローポジションからハイポジションまで滑らかな運指が可能な形状となり高い演奏性を実現しました。

D-45の特徴と魅力

Martinギターだけでなく、すべてのアコースティックギターのフラッグシップ的存在である”D-45”
時代に流されることなく常にトップに君臨し続ける名器中の名器。

Martin社が保有する木材の中でも「プレミアムグレード」と呼ばれる最高ランクの木材のみで製作され、熟練工の手によって厳しいチェックを受けながら生産されております。

トップのスプルース材は8段階中のグレード8、サイド&バック材のインディアン・ローズウッドには、4段階中のグレード4、
フィンガーボードのエボニーには、4段階中のグレード4と最高ランクのプレミアムグレードが使用されております。
ネックには、セレクト・ハードウッドではなくジェニュイン・マホガニーが採用されており、こちらもよりグレードの高い木材が使用されております。

一目で分かる豪華なインレイには、Style 28等で使用されているレギュラー・アバロンではなく、より色鮮やかなセレクト・アバロンが使用されております。

↑左がD-45、右がD-41で同じアバロンでもD-45の方が色鮮やかでより高級感があります。

現行”D-45”のサウンド

まとめ

Martin Guitarの最高級機種にして、すべてのアコースティックギターのフラッグシップ的存在である”D-45”

一生物に相応しいアコースティックギター、弾き込むことで自分の色に染めていき、自分自身のサウンドを作り上げていく… そして、共に成長する…。

そういったものはギターに限らずなかなか出会えるものではありません。

良いギターとは、表現力豊かで多彩なサウンドを兼ね備えており、プレイヤーの思うがままの表現を形にしてくれるものです。

そんな夢の詰まった”Martin Guitar 最高峰のD-45 Standard”是非ご自身の手で奏でてください!!

Martin D-45 のスペック
・トップ板材 :スプルース単板(プレミアムグレード)
・サイド板材 :イースト・インディアン・ローズウッド単板(プレミアムグレード)
・バック板材 :イースト・インディアン・ローズウッド単板(プレミアムグレード)
・付属品 :ハードケース、保証書
・税込販売価格:¥1,450,000-(2023年6月現在)

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