徹底解剖!Martin SCシリーズレポート! ~番外編~

こんにちは。G-CLUB SHIBUYAの矢嶋(やじま)です。

前回の記事は既にご覧いただけたでしょうか?
待望のUSA製SCについて、文字通り解剖して徹底解説しているので、是非ご覧ください!

実は先日、弊社のアコースティック担当達で、
「せっかく待望のモデルが入ったから、みんなで勉強会(分解)をしよう!!」
ということになりまして・・・。

SCシリーズの生い立ちを含め、細部に至るまで理解を深めるための集まりを開いておりました。
実際に勉強会をしてみたら、濃い内容だったので是非皆様にも共有したい!と思い立ち、
今回も執筆しました。

SCシリーズについては既に公式ブログで何度か解説しておりますが、
今回は番外編ということで、意外と知られていない情報も含め公開しちゃいます!

それでは、ご覧ください!

そもそもSCシリーズっていつ誕生したの?

ご存じの方も多いと思いますが、SCシリーズは2020年冬のNAMM Showで突然発表されました。

会場で撮影した当時の画像。大胆なボディシェイプに驚いたのを今でも覚えています。

Martin社は新製品の発表をするときに大体事前情報を公開するのですが、SCシリーズの時はそういった告知が一切ありませんでした。

これ、実はMartin社では異例中の異例で、事前リークにも気を付けて、一切の情報を外部に出さなかったようです。

Xブレーシングに次ぐ大革命とも言えるSCシリーズだからこその異例だったのでしょう。
相当気合入ってるなあ・・・と感じます。

加えて、2014年頃には何と既にSCシリーズの原案が挙がっていたようです。
(原案当初は発砲スチロールでテストデザインを製作していたらしいですよ・・・!)

形になるまで凡そ6年。Martin社の一大プロジェクトということはこの年数が物語っていますね。

SCシリーズ発表の前には、2010年頃にGP(グランドパフォーマンス)サイズが発表されており、
新しいボディシェイプの発表は実に10年振りでした。

今思い返すと、この辺りから「エレアコ」に力を入れ始めていたのかもしれませんね。

何故13フレットジョイントなの?

SCシリーズはメキシコ製・USA製ともに13フレットジョイントが採用されています。
シリーズを特徴づける大きなポイントですが、何故13フレットなのでしょうか?

Martinギターでは12フレットジョイント、もしくは14フレットジョイントが一般的。
何故この間を狙ったのか。実はこれ、物凄く理にかなっているんです。

結論から言うと、「ロングスケールとショートスケールの良い所取り」なのです。

SCシリーズはドレットノートと同じくロングスケール(約645mm)が採用されており、
張りのあるサウンドが特徴です。

これに対して、13フレットジョイントにすると、ポジションが1個分ボディ側にズレる為、
ローフレットが近くなるのです。

つまり、ロングスケール特有の張りの強さを保ちながら、弾き心地はショートスケールに近いという夢のような弾き心地を実現しているのです。

意識して触らないと分からないくらいに自然で弾きやすい演奏性を作っているということですね。

ローフレットが近くなる分、コードストロークも大変やりやすくなるので、弾き語り等のスタイルでも活躍できるのがSCの魅力。

プレイスタイルを問わずに手に取ることが出来るエレアコと言えるでしょう。

SureAlign systemって何がすごいの?

SCシリーズ最大の特徴は何と言ってもネックが取り外せることでしょう。

でも・・・ネックが外せることで生まれる恩恵って具体的に何でしょう?

実際に分解している写真と合わせて読み解いていきましょう。

SCは2本のボルトで接合する設計になっており、画像を良く見るとボルトの穴が2ヶ所空いているのが分かります。

また、接合部には下の画像のような金属のパーツが仕込まれています。


この金属パーツがストッパーのような役割を果たしており、構造上抜け落ちることがないような設計になっています。
ジョイント部に紙の1枚も入る隙間が無い程、ぴったりと接合される要因はこういったところからも来ていますね。

まさに、最先端のダブテイルジョイントと言えるでしょう。

また、SCシリーズ専用のカートリッジ式シムを交換することでネック角を変えられるのも魅力の1つ。
別売りの専用リペアツールキッドの中には何と8種類の厚みが付属しています。

シムを交換する事でネック角を変えられる、つまりサドルを削らなくても調整することができるのです。

使い方としては、弦高を下げたい時は厚みのあるタイプ反対に上げたい時は薄いタイプに交換すると希望の弦高にすることができます。

コードストロークを多用する方は弦高を若干上げて、フィンガースタイルであれば出荷時よりも低くする・・・のように、スタイルを問わずに調整できるのが強みですね。
※シムは樹脂製の為、取り外しの際の破損には十分ご注意ください。

また、ネックを外したときトラスロッド調整用穴の隣に、何やら調整に使いそうな穴があるのをご存じでしょうか?

これ、実はセンターずれを直すときに使う部分なのです。

ちょうどシムの真上あたりに謎の金属部があるのがお分かりいただけると思います。

さっきのところを回すとこの金属部が働き、力が加わるという仕組みです。

通常使っているだけであれば、まず触ることのない機構ではありますが、備えあれば患いなしということなのでしょう。
※極端に回すとネックヒール部に強い負荷がかかり、割れに繋がる場合もあります。調整する際はご注意ください。

このように、独自設計がもたらす様々な恩恵はプレイヤーにとっては嬉しい物ばかり。

私個人として、個人レベルで安易に調整が可能な設計というのがSCシリーズ最大の特徴であるといえるでしょう。

弾きやすさに直結する部分をその場で調整することが出来てしまうのは、最も現代ニーズに対応しているといっても過言ではないでしょう。

※調整作業にご不安な方は専門のリペアマンまでご依頼ください。ご自身で作業される場合は自己責任でお願い致します。

ネックの着脱ではここに気を付けよう!

個人レベルで調整が可能なSCシリーズですが、実際にやるときにはどういったことに気を付ければ良いのでしょうか?
今回は特に抑えておきたいポイントをご紹介します。

まずは、接合部の隙間が無いか必ずチェックしましょう。

ぴったりとくっついていなければ、弾くことはもちろん破損にも繋がる恐れがあります。

ネックを取り付ける際は指板上とヒールの両側から抑え込むようにやりましょう。

また、より固着させるために、SCシリーズには共通してジョイント部に爪があります。

ネックには爪の受け側の部分があるので・・・

しっかりと噛み合うように注意しつつ、隙間が出来ないように気を付けましょう。

また、接合部の中では下の画像のように、ボルトと金属パーツが嚙み合っています。

この金属パーツが意外と動くので、ボルトを締める際には気を付けましょう。

※調整作業にご不安な方は専門のリペアマンまでご依頼ください。ご自身で作業される場合は自己責任でお願い致します。

SC-Style41 ジョン・メイヤーモデル!?

Martin社から自身の数多くのモデルを出しているジョン・メイヤー。

つい先日、OM-28 JMの誕生20周年を記念して発表されたOMJM 20th Anniversaryが記憶に新しいですね。

Martin社とは切っても切り離せない氏ですが、実はSCのジョンメイヤーモデルが存在する事をご存じでしょうか。

どうやら、2~3年前にMartin社が氏の為に世界で1本のSCを製作してプレゼントしたようで、当時彼のSNSに掲載されており、「あれは何だ!?」と思う人が世界中で続出したみたいです。

大まかなスペックはトップにはイングルマン・スプルース、サイド&バックにはココボロを使用。
ここでもやはりイングルマン・スプルース。氏のサウンドの根幹となる大事な部分ですね。

装飾はStyle41をベースに、指板インレイには大きく「JOHN MAYER」と刻まれています。
電装系にはFishman Matrix infinityが搭載されているのだとか。
OMJMにはGold Plus Natural 1が搭載されているので、意外ですね・・・。

指板インレイに関しては、氏のソロ名義8枚目となる「Sob Rock」というアルバムと同じフォントを使用して、名前が刻まれているみたいです。
中々粋なアイデアですね・・・!

当時のナザレスファクトリーにはSC関係の機械が無かったらしく、すべて手作業かつ昔ながらの製作方法で作り上げたみたいです。
大昔に考案された製作方法で最新のアコースティックギターを作るなんて、何だか感慨深い物を感じます。

大人の事情でここに写真を掲載することは出来ませんが、興味のある方は是非調べてみてください。
ココボロの杢目が非常に素晴らしい1本ですよ・・・!

USA製モデルが出たということは・・・?

先日、SCシリーズがついにUSA製モデルの仲間入りを果たしましたが、これが意味する重大なポイントはカスタムオーダーが出来る点です。

恐らく現状採用可能なスペックの大抵のものは使用できそうです。

ただ、ジョン・メイヤー氏のSCやCS-SC-2022を見る限り、最上位の装飾はStyle41が限度なのかなあ・・・?と思っています。

Style42やStyle45の指板両脇に位置するアバロンの装飾がSCシリーズの設計上、どうしてもネックに干渉してしまうと思うので、もしオーダーするとなったらStyle41が最上位の装飾になると予想しています。

サイド&バックを変えたり、プレミアムグレードのトップ材にしたり、カラーリングを加えるなど・・・。
私の中で日々妄想していたオーダーが形になる日が来たのかもしれません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

意外と知られていなさそうな情報で盛り沢山な番外編でした!

SCシリーズは知れば知るほど底なし沼のような魅力に惹かれるのです・・・。
近い将来、アコースティックギターのスタンダードな物として広まっていくことでしょう。

エレアコを選ぶ上で選択肢の1つとして非常におすすめできるモデルです。
Martinらしい煌びやかな音で沢山の技術が詰め込まれたSCはまさに時代の最先端を走っていると言えるでしょう。

是非当店でお試しください!

それでは、また次回!

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