Red House Guitars【国産ブランド紹介】

プロミュージシャンからアマチュアミュージシャンまで、幅広く支持されている長野県塩尻のギター工房Red House Guitars。世界的に有名なブランドを手掛けることで一躍有名となったRed House Guitarsでは、長年の研究と経験により得た技術でGuitar&Bassをお客様の理想の音、最高のプレイヤビリティの楽器に近づけることを信条にオーダー及びリペア、チューンナップを行っています。アンサンブルでも埋もれることなく、バランスが良く、芯があり、粒立ちの良い音を奏でるGuitar&Bassをプレイヤーの立場になって制作。長年のリペア技術と厳しい品質規格の製造経験で培ったノウハウを生かした製品づくりをしています。

What’s Red House? 〜レッドハウスとは?〜

レッドハウスは国内ギター工房で8年間修行を積んだ石橋良市により1987年に創業されました。
当初はリペアが中心で、特にヴィンテージギターのリペアを数多く扱いました。これが後のギター製作の礎の一つとなります。その後、世界ブランドOEM生産を進めて行くと共に会社の規模も広げていきました。当OEMにおいて、求められる品質や技術をクリアしてきた事により、レッドハウスのギター製作において大きな飛躍となり、世界で通用するレベルの楽器製作の実力の裏付けがなされました。また、並行して引き続き数多くのリペアを受けて答えてきた中で、様々な現場において求められる楽器とは?という命題の答えの引き出しを数多くストックしてまいりました。
これまでに得ることのできたこれらの様々なノウハウを凝縮・反映して、この度2020年に当社オリジナルブランド「Red House Guitars」を正式に立ち上げる運びとなりました。ギター・ベース製造における当社の考え方に付いてお話させていただきたいと思います。

レッドハウスの製造指針として、
  ・楽器に不安を持たずに音を楽しんで頂く。
  ・ストレスの無い弾き心地を目指す。
・バンドアンサンブルの中においても埋もれることの無い音。
・各弦、各フレットでの安定したピッチ。
・長く安定して使用できる楽器作り。
以上の事が挙げられます。

製造過程では、
・材の選定(重さ、鳴り、組み合わせ)
・設計、加工精度
・パーツ選定
をより深く考慮して実現させてきました。

材の選定

1つの材を選ぶにしても重さや鳴り、固さ等により最終的な出音の違いになります。
ボディ材として最も使われるアルダー材でも重さや固さ…その材が持つ音の特性は多様性があり、完成後の出音を大きく左右します。また、ネック材、指板材、…ボディトップ材等といったものが加われば、その選択は無数に存在してきます。
そういった中でオーダーがあった場合、お客様の要求やこだわりを反映させて材を選び組み合わせて行くことになりますが、安定して良質な材を確保するには大変な労力がかかり日々枯渇していく木材を製造の創意工夫で補って行くことになります。

設計、加工精度

主にパーツからの設定値になりますが、レッドハウスで目指す音に最適な加工が必要になります。
それは以下の各項目になります。

・ヘッド厚
・ブリッジ駒の高さ
・トラスロッドの入れ方
・コマからボールエンドまでの長さ
・フレット溝のタイトさ
・弦を張った状態を想定しての指板作りとフレッティング
・ピックアップの位置
・スケールの選択
・塗装

ヘッド厚

HVC (Head Vibration Controller〜後述) の導入前からヘッドの制震構造を考え、F社に代表されるヘッド厚よりも厚く加工してあります。使用年数によりヘッド起きが発生し、弦振動がうまく伝わらず音が逃げてしまう事象も防ぐ効果があり長く使用する上で重要なポイントでもあります。

〜HVC (Head Vibration Controller)とは?〜

HVC (Head Vibration Controller)はヘッドの振動をコントロールしてピッチの安定をはかるレッドハウスが独自に開発したシステムです。開発のきっかけは従来製品のピッチの不安定さ (特にアタックのタイミングでのピッチ)が気になるとのお客様からのご相談でした。そこで様々な方法での解決を試行錯誤して検証しました。ここにその過程を記します。

*ネックのナット裏を厚く加工〜ピッチ安定への貢献は有ったが、響き(鳴り)が良くなかった。
*ヘッド裏に鉄板を貼り付けた〜ピッチの安定はみられたが、サウンドが変化し過ぎた。またヘッド落ちになりがちなのもNG。
*ヘッド裏にエボニー材を貼り付け〜ピッチの安定は検証できたが、やはり求めるサウンドとかけ離れてしまった。

そして、最終的に「ある素材(企業秘密)」をヘッド裏に埋め込むという方法で、ヘッドの振動をコントロールして「ピッチの安定」「自然なサウンド」を両立することができました。しかも、見た目を全く犠牲にせず、後から穴あけなどの加工も必要ありません。
搭載品と非搭載品の比較をすることが難しく、驚くような効果を実感していただけるようなシステムではございませんが、試された方々からは「音の立ち上がりが早い」「チューニング(ピッチ)が安定している」「デッドポイントが少ない〜コードの響きが濁らない」「サスティンが伸びる」などの所感をいただいておりますので、狙った効果はしっかりと反映されていると自負しております。

ブリッジコマの高さ・コマからボールエンドまでの距離

例として挙げるならばレスポールのチューンOマチック&ストップテイルピースの位置関係が分かり易いと思います。ブリッジのコマにかかる弦のテンションは下方向とネック側方向になります。
弦の角度が浅くなるほど下にかかるテンションが弱くなり音が逃げやすくなります。逆に角度を深く鋭角にするほど下にかかるテンションは強くなり固くつまった音になっていきます。その稼働範囲の中でレッドハウスの基準としての最適な位置関係を探し出してセットアップします。
そのためには様々なブリッジに最適な位置関係存在し、それを見つけ出しセットアップできるように加工しなければなりません。今回新たに自社ブランドのベースギターを新規に製作するにおいて従来製品の設定値を参考にしましたが、最終的にはパーツから設定値を再検討し直して、ブリッジ、サドルの適正位置を割り出しました。

フレット溝

フレットの山に高さ太さがあるように、足の部分にも高さ太さがあります。フレット溝を加工するにあたってフレットに合わせた幅や深さを決めます。
当然ながら弦のテンションがネックにかかるので弓なりにしなる訳ですが、フレット溝がタイトであれば剛性が増し腰折れや順反りが起きづらくなります。しかしながらタイトすぎると指板を作っている段階よりも逆に反ってしまう事になり、楽器としての機能を果たせなくなる事態にもなり得ます。そのためには材とフレットの見極めが必要になり、指板を作る段階でロッドをどれだけ締めるか、などといった複合的な知識も必要になります。レッドハウスではこの作業を問題無く進行するためにフレット溝の幅を0.02ミリ単位で切り分けられるように3種類の溝切り刃を使い分けています。これらの作業はネックの振動を制御する事に繋がり、安定したピッチ感や倍音の提供に寄与します。

弦を張った状態を想定しての指板作りとフレッティング

ギターのネックは弦を張った状態において弓なりに反りますが、均等に反ることは無く負荷がかかる部分やトラスロッドが効きやすい部分が出てきてしまいます。指板作りをする際に弦を張った状態を再現し作業する事で「ローアクションセッティングが可能」「弦からフレットまでの距離をバランスよく保つ事でピッチを安定させる」「はじめから腰折れの状態を防げるということが可能になります。

ピックアップの位置

ギター、ベース共にピックアップの位置関係で出音が変わります。フロント、センター、リアで音が違うように、すべてのポジションに意味があり音を決定付けます。ST, TL, LP, JB, PB等のスタンダード品はピックアップの位置関係においても基本であり、大きく外すと音が変わってしまい慣れ親しんだ昔からの音から外れてしまいます。しかし、現代のギターにおいてはピックアップのピッチ、ブリッジのピッチ、様々なスケールが存在しているので、それぞれに適した位置を割り出さなくてはなりません。
レッドハウスではピックアップの位置関係をずらすとどのように変化するかを検証するベースがあります。これはスケールからの位置関係だけではなく左右の動きも検証できるのですが、弦とポールピースの位置関係でも出音に変化がある事が分かっています。この事はピックアップが同じでも弦ピッチが変われば音が変わることを意味しています。良し悪しではなく、傾向を知り活かす事が重要であり、オーダー等でお客様からの要望を叶えるための要因の1つです。これら一つ一つを検証する事で目的の音に近づけることが出来るのです。

スケールの選択

ギターベース
25.5インチ(F社スケール)34インチ
25.25インチ(レッドハウス・ニコニコスケール)
25.0インチ(P社スケール)33インチ
24.75インチ(G社スケール)

ご要望があればどのスケールにも対応可能ですが、スケールが違えば弦の振幅にも差が出てきます。
同じ弦のゲージで、スケールを短くした場合、
・弦の振幅は大きくなり、ピックアップで拾う音も大きくなりサウンドも変わります
・弦のテンションが低くなり、演奏時のタッチが柔らかくなりサウンドも変わります
このようにスケールの選択は楽器の根本を決めるバランス哲学になります。25.25インチのスケールを採用している理由はこれにあり、10-46の弦に対してテンションがキツいと感じるが09-42では物足りないと感じるお客様の要望に応えました。また、リバースヘッド特有の1弦がナットに近いせいで起こる、詰まった印象の音を軽減する狙いもあり、現状で不満を抱えているお客様にオススメできるモノになっています。25.25インチ (ニコニコスケール) は当社の考えるバランスを取ったギター製作の一つの回答になっております。

塗装

基本的にはお客様のニーズに沿った塗装を基本としますが、そこにも塗料特性の説明も不可欠です。

〜ラッカー〜
木材に浸透しかつ経年変化で硬質に薄くなっていく塗料です。サウンド面では完成直後の状態は塗装が柔らかく音の立ち上がりは鈍い傾向にありますが、時間経過と共に揮発していき硬く薄くなっていき、その結果、木の鳴りを損なわずに出すことができます。レッドハウスでは何パターンかのラッカーを適所に使い分けています。

〜ウレタン〜
2液性の硬化塗料で作業性が良く、クリアの透明度が高いです。ラッカーよりも厚く吹ける事と乾燥時間が短くなる事により作業性が高く、塗料の痩せにも強くなっています。クリアの透明度も高く色の発色はより鮮明になりますラッカーに比べて完成時の硬度はありますが、経年変化での硬化は望めない変わりに完成時のサウンドを維持できる事も利点です。

〜ポリエステル〜
2液性の硬度塗料ですが、ウレタン塗料よりも厚く吹き付けでき、傷に強くツヤも維持できます。大量生産する上で生まれた経緯はありますが、傷や多少の衝撃にも強くツヤも落ちない特徴があります。ウレタンよりも厚く吹きつけされるため、凹凸のあるアッシュ材等でも1工程で埋める事が可能になり早く仕上げられます。ただ気温や湿度により気泡が発生しやすいという特性もあります。

以上3種類の塗料が基本ですが、近年「車用の塗料にも着目し今後の発展に挑戦していきたいところです。塗料の特性によってサウンドの傾向や見た目も変わるため(当然金額もですが)、塗装の選択肢は悩み所になってきます。レッドハウスでは従来は厚くなりがちな塗料でも薄く仕上げる事を信条としているため、ポリエステル等の肉厚な塗装であっても極端に木の鳴りを損なう事はありません。

最終的な楽器の美観という観点の美しさと楽器の鳴りを妨げないというバランスが大切であり、最も重要な部分であります。見逃されがちですが、塗装は楽器の音作る上で大きなウエイトを占めていると思います。当然楽器の保護、美観の面でも重要です。その部分をコントロールできるのは当社の大きな強みになっていると思います。

パーツ選定

現在、多くのメーカーでギターパーツが存在しています。メーカー独自のパーツも開発され、そのすべてを把握する事は困難と言えるでしょう。楽器としてのパーツを見る場合何点か重要な要素が出てきます。

・精度と操作性
・素材による重さ
・素材による音の響き
これらが分かれば最終的なサウンドにどのように影響するかが想像できます。

精度と操作性

これは当然、重要な事柄でGotoh, HipShot, SPERZELなどは信頼度が高いパーツとして選択できます。当然の事ながら、長くストレスなく使用してもらうためには不具合が少なく安定供給されている事が重要で、新製品を使用する場合は検証も必要になってまいります。

素材による重さ

近年、楽器の最終重量は気になる部分だと思います。パーツ重量が楽器の3割程度を占めるので気にしないといけなくなります。(もちろん木材の重量もですが。) また、単純に重いパーツは振動を抑え安定した出音に繋がり、軽いパーツは木のなりをそのままに伝えハイの抜けが良くなる傾向があります。

素材による音の響き

パーツに使われる金属は、鉄、鋼、ブラス(真鍮)、アルミ等、様々です。同じ形のパーツでも素材が違えば音の特性も変わります。特に弦に直接触れる部分の材質はサウンドへの影響が大きく感じます。
レッドハウスで重要視している部分としては高音の響き方です。(プレゼンス成分)例えば、トレモロブリッジのブロック等は各社(製造元)で異なります。過去に当社で3ブランドを比較検証した際は、タップトーンを聴き比べ、実際に装着してサウンドもチェックいたしました。結果は高音の音域帯や伸びが各ブランドごとに違い、最終的な音にはそれぞれ一味違う印象を受けました。

以上の事がレッドハウスで行っている楽器製造の基本の一部となります。近年、様々な素材、加工方法がとられている中で「古きを知り新しきを知る」事がレッドハウスの信条だと思っております。より良い楽器をお客様の手に届けるために努力していく所存でございます。

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