コーティング弦とトリートメント弦
―その違いとは?

ギターファンの皆さん、こんにちは!正直に言って、私たちは誰しも自分のギターを愛していますよね。ギターが気持ちよく鳴ってくれれば、自分の演奏も気持ちよくなるものです。そして、その鍵を握るのが「弦」です。ギターの持つポテンシャルを最大限に引き出すためには、適切な弦選びが欠かせません。トーンの良さも、演奏のしやすさも、弦次第と言っても過言ではありません。
アコースティックギター用の弦には、素材やゲージなど、さまざまな選択肢があります。その中でも「コーティング弦」と「トリートメント弦」は、長持ちするトーンと優れた耐久性を約束する選択肢としてよく比較されます。これらはしばしば同じカテゴリとして語られがちですが、実は大きな違いがあるのです。
では、コーティング弦とトリートメント弦は何がどう違うのでしょうか?
このテーマについて、次に詳しくご紹介していきます。

まずは少し歴史を振り返りましょう。アコースティックギター用のスチール弦は、100年以上前から存在しています。登場当初から、セット内容は基本的に高音域用のプレーンスチール弦が2本と、スチール製の芯線に巻き弦を施した低音域弦が4本という構成になっていました。
この「ノンコーティング弦」は長い間スタンダードでしたが、その間にも進化を遂げてきました。最初に使われていた巻き線素材は「銀メッキスチール」で、これはやや硬質で突き刺さるようなトーンを持っていました。1930年代になると、この巻き線は「モネル」(ニッケルと銅の合金)に置き換えられ、より心地よいサウンドと耐腐食性が得られるようになりました。その後、さらに多様な巻き線素材が登場します。たとえば、ブロンズ(銅80%/錫20%)は明るくシャープな音色を、フォスファーブロンズ(銅92%/錫7%/リン1%)は温かみのある豊かな音色をもたらします。
「コーティング弦」が初めて登場したのは1970年代ですが、広く普及し始めたのは1990年代に入ってからです。コーティング弦の原理はシンプルで、弦の表面にポリマーコーティングを施すことで、酸化や腐食を抑え、結果として寿命が長くなるというものです。現在では、コーティング弦はノンコーティング弦と同じ素材・ゲージ・巻き線のバリエーションで提供されているのが一般的です。
これら3つの基本要素(素材・ゲージ・巻き線)はそれほど大きく変わりませんが、「コーティング弦」においてはコーティングの素材、厚み、工程がメーカーごとに大きく異なります。ほとんどの弦メーカーは自社独自のコーティング処方を持っており、その厚みもメーカー間、あるいは同一メーカー内の商品ラインによっても差があります。
たとえば、巻き線にコーティングを施してから芯線に巻き付ける方法もあれば、巻き終わった後にコーティングする方法もあります。巻き弦のみコーティングされている場合もあれば、プレーン弦を含む全弦がコーティングされている場合もあります。
一方、「トリートメント弦」が登場したのは2000年代後半のことです。トリートメント弦の目的も、コーティング弦と同様に腐食や酸化を防ぎ、弦の寿命を延ばすことにありますが、そのアプローチは異なります。トリートメント弦ではコーティングを施すのではなく、分子レベルで化学的処理を行うことで効果を発揮します。
この処理により、コーティング弦に匹敵する耐久性と、ノンコーティング弦のような弾き心地の両立が可能となります。通常、巻き弦・プレーン弦の両方がトリートメントされているのが一般的です。なお、使用される素材や処理技術は各メーカーの企業秘密となっています。
このトリートメント弦の可能性に早くから注目したのが C.F. Martin & Co. です。同社は独自の特許取得済みトリートメント技術の研究開発に早期から投資し、2010年にMartin Authentic Acoustic Lifespan® を発表しました。その後も研究開発を重ね、2019年には次世代版となる Martin Authentic Acoustic Lifespan® 2.0 を発売しています。

ここまで歴史を見てきましたが、ここからはコーティング弦とトリートメント弦の実用的な違いに入る前に、まずは両者に共通するメリットについて整理しておきましょう。
従来のノンコーティング弦と比べて、長寿命で音質が長持ちする。
どれくらい長持ちするかは、あなたの演奏スタイルや使用環境(趣味、ライブ、レコーディングなど)、そして体質(手汗の成分など)によって異なりますが、多くのプレイヤーにとって、コーティング弦・トリートメント弦はノンコーティング弦の2〜5倍の寿命を持つとされています。
コストパフォーマンスが高い。
確かに最初の購入価格はノンコーティング弦より高くなりますが、交換頻度が減るため、長期的には節約につながる場合も多いです。
フィンガーノイズ(指が弦に擦れる音)を軽減してくれる。
録音やライブなどで、クリーンなサウンドを求める人には特にありがたい特徴です。
そして何より、弦交換の手間が減る。
正直、多くのギタリストは弦交換そのものはあまり楽しんでいません。交換後の音や感触は好きでも、作業そのものは面倒。でも、長持ちする弦なら交換の頻度が減り、プレイ時間を増やせるというメリットがあります。
では、ここからはいよいよ、コーティング弦とトリートメント弦の違いについて見ていきましょう。

最大の違いは音色(トーン)です。
コーティング弦には、それ独自のサウンド特性があります。
一般的に、ノンコーティング弦ほどの音量や音の複雑さ(倍音の豊かさ)はありません。
また、ダイナミックレンジ(強弱の幅)もやや制限される傾向があります。
特に、ハイポジションでの演奏時に高音域の響きが抑えられることが多いです。
それに対して、トリートメント弦は従来のノンコーティング弦とまったく同じ音色を保ちます。
つまり、豊かな倍音、長いサステイン、音のバランス、音量、そして広いダイナミックレンジをすべてそのまま維持することができます。

もうひとつの違いは、弦に触れたときの感触、つまり押弦したときのフィーリングです。
コーティング弦はその性質上、滑りやすいのが特徴です。
そのため、特にチョーキング(弦を引き上げる奏法)やビブラートの際に、指が弦から滑り落ちる可能性があります。
一方で、表面が滑らかなので、指への負担が少なく、長時間の練習や演奏でも指が疲れにくいという利点があります。
トリートメント弦は、従来のノンコーティング弦に近い感触です。
ただし、表面摩擦がやや軽減されていると感じるユーザーもおり、演奏時のフィンガリングが少し滑らかに感じることがあります。
さらに、耐久性にも違いがあります。
コーティング弦は、時間が経つとコーティングが剥がれる可能性があります。
これは、弦がフレットと繰り返し接触することで、コーティングが物理的に削れたり剥がれたりするためです。
一方で、トリートメント弦はコーティングが「化学的に結合」されているため、剥がれることがありません。

コーティング弦とトリートメント弦のどちらを選ぶかは、個人の判断に委ねられます。トーンの好み、ご使用のギター、演奏スタイル、演奏環境(ソロ、デュオ、バンド、趣味、プロの現場、レコーディングなど)など、さまざまな要素を考慮する必要があります。どちらを選ぶのが正しいかという問いに対する正解は、あなたにとって最適なものが正解なのです。
C.F. Martin & Co. は、自社で弦を製造している唯一のアコースティックギターメーカーです。50年以上前から、最高の品質と一貫性を備えた弦を確保する唯一の方法は、自社で設計・製造することだと私たちは気づいていました。
私たちは、世界屈指の楽器を用いて自社の弦をテストできるという特権を持っています。そうすることで、弦の設計と製造における私たちの革新が、あらゆるギターにおいて卓越したトーンとニュアンスを引き出すことを保証しています。Martin Authentic Acoustic Lifespan® 2.0 のフォスファー・ブロンズおよびブロンズ弦は、演奏性と耐久性に優れたアコースティックギター弦の究極形ともいえるかもしれませんが、Martin Authentic Acoustic SP、Martin Marquis®、Martin Originals、Martin Retro、Martin Flexible Core、そして Luxe by Martin® Titanium Core や Kovar™ SP Core® 弦など、他の優れた Martin 弦も取り揃えており、どんなギターにもぴったりのセットが見つかるはずです。